この秋、笠井叡新作公演として上演される本作は、笠井久子の同名著作からインスパイアされて生まれたものである。
人類の歴史は、天の川のように、無限空間の中を流れている。この眼には見えない「川」の流れと共に生きる人魚のような人間は、無限時間の中のいったい何処を今、生きているのか。そして何処へ行こうとしているのか。目覚めた宇宙的意識によって、その現在の位置を測り、未来を方向づけるのは、ダンスである。未来の何を?——人間のカラダを、そして宇宙のカラダを、である。
ミクロコスモスとしての人間と、マクロコスモスとしての宇宙は、ともにカラダを持っている。そして人間が、ダンスを通して自身のカラダの中に「新しいカラダ」を生み出そうとするならば、宇宙もまた、植物が自身の中に未来の種を孕んでいるように、新しい惑星を自らの中に生み出そうとするだろう。
地球は今、ダンスとともにこの「新生惑星」を育てつつある。
今、人類が始めてしまった新しい戦争は、単なる破壊のための破壊で終わるだろう。勝者も、新たな領土も、何処にもない。そして地球は、虚無の闇の中を落下し続けるであろう。
おお、目覚めたウサギ、
おお、目覚めたウサギ、
お前は地球の破滅以前に、お前のカラダの中に、あの天上に輝く満月の中に、「新生惑星」を発見したのだ。宇宙の川を渡って、新しい惑星に移住するのだ。
おお、屈強なトカゲたち!
この川の岸辺から、何匹梯子のように並べば、あの輝く満月の如き新生惑星の淵に到達することができるか。お前たち並んでご覧。あたしが数えてあげるわ!
ひ ふ み よ い む な や こ と ・・・
一匹の目覚めたウサギが、この新生惑星に飛びついたとき、騙されたことに気付いたトカゲは、白いウサギの皮を全身剥ぎとった。それからウサギは、塩辛い海の水の中に沈められた。
無限の試行錯誤の末に、目覚めたウサギはあの輝く「月」に飛び移るであろうか?
ウサギ!
ウサギ!
何見て
跳ねる
ウサギ!
ウサギ!
何見て
跳ねる
十五夜
お月様
見て
跳ねる!
見て
跳ねる!
ミワ、ミキ子、エミ
見て跳ねる!!
見て跳ねる!!
振付ノート 笠井叡
芸劇dance ポスト舞踏公演
『畑の中の野うさぎの滑走
一匹のトカゲが焼けた石の上を過った』
振付・演出・構成・出演:笠井 叡
出演:KAi MiWA、川村美紀子、小倉 笑
2024年9月6日(金)~9月8日(日)
会場:東京芸術劇場 シアターイースト